| (C) hayashida21.com 2000-2004 | ||
![]() |
||
| [ HOME ] | ゲノム・バイオビジネスの法的問題点 | なんでも110番 | ネット講義 | ||
|
|
|||||||
Part.1 ゲノム - genome - |
||||||||
■ アメリカ
2000年2月8日、クリントン米大統領は、連邦政府において、採用や昇進の際に遺伝子情報を用いたりすることや、職員の遺伝子情報を得たり、あるいは公開したりしてはならないとする大統領令に署名しました。さらに大統領は議会に対し、保険会社による遺伝子差別を禁じる法律を制定するよう求めています。アメリカは日本と異なり民間健康保険が中心で、問題となっているのは主に健康保険ですが、団体健康保険については遺伝子情報を利用することを禁止する法律がすでに成立しています。 |
||||||||
■ 日本 各企業による遺伝子検査の商業利用計画が急速に進行しているのに比べ、その法的・倫理的な議論は全くもって不十分なものです。遺伝子情報が様々な方面へもたらすリスクを考慮して、早急に検討を行う必要があります。 |
||||||||
| ※具体的問題点 | ||||||||
|
1.遺伝子検査を行う際に用いる(InformedConsent)文書 医療・研究・商業利用の他、様々な場面が考えられるかと思いますが、いずれにせよ遺伝子検査によって受ける可能性のあるすべてのリスクにつき、事前に被検者に対し詳細な説明を行い、被検者の理解と同意を得ておく必要があります。すでに東北大、九州大、国立循環器病センターなどにおいて、十分な説明がないまま遺伝子の無断解析が行われていたことなども判明しています。こうした無断解析は潜在的に広く行われてきた可能性もあり、今後は遺伝子検査の試料が生じ得る医療行為を行う全ての場面において、それらを無断で遺伝子検査に供しない旨の確認が求められることになるかもしれません。ICにおける具体的な論点としては、ICの手続及び方法、文書の内容、同意確認とその撤回の方法、同意の代諾者、試料の二次利用に関する同意、試料の廃棄または管理の形態、サポート・カウンセリングの体制、などがあげられます。 《ICの内容について》 *家族性腫瘍研究会のガイドライン 参照
*厚生省のヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針 参照
《二次利用についての同意》 二次利用をも考慮しなければならない場合に関しては、二次利用を行う機関、利用の目的(研究・医療・商業目的)、同意の形態(包括的同意or限定的同意、個人的なデータとしての利用に対する同意or総合的統計的な匿名性あるデータとしての利用に対する同意、二次利用に対する同意も不同意もないと考えられる場合の扱い→不同意とみなすべき)など、よりいっそう詳細なICが求められることになるでしょう。また、二次利用までのあいだに、二次利用の拒否を申し出る権利及びその手続方法を明確に示しておく必要もあります。二次利用を行う機関及び利用状況等の情報に関しても、被検者の要望があれば常に提供できるような体制が必要です。 |
||||||||
| 2.遺伝子検査の結果の秘密保持 遺伝子情報は、結婚・就職等あらゆる場面で被検者の不利益として働く可能性があります。情報へのアクセス権を持つ者を狭く限定し、被検者の同意のない限り、被検者の親族をも含めたすべての外部の者に対して秘密を守る必要があります。情報の取扱いや管理等に関しての具体的な対策が必要です。アイスランド共和国では、全国民の遺伝子情報を収集し、政府から委託された民間企業がデータベースを作成、一括管理・販売するといった法律が成立しています。アイスランドの場合は非常に極端な例ですが、国内でもすでに研究者と一般企業が共同で遺伝子解析ビジネスのベンチャー企業を立ち上げたり、情報セキュリティーを扱う企業が遺伝子情報の管理を目的としてバイオベンチャー企業と提携するなど、商業利用の動きは急速に広まりつつあり、早急な対策が求められています。具体的な論点としては、管理機関の整備、利用目的の明確化、情報の匿名管理、PC管理(ネットワーク、情報の暗号化等)のあり方、不要データの廃棄方法、医療機関であればカルテ等への記載内容、などがあげられます。 |
||||||||
| 3.生命保険加入の際の告知義務 保険加入の際に告知義務を課せば、加入者は遺伝子情報によって保険に加入できなかったり、高額な保険料を請求されたりすることになるかもしれません。一方、保険会社側からすれば、被保険者が遺伝子検査により発症可能性の高いことを知ったうえで高額保険への加入を求めてくる、いわゆる逆選択を防ぐ必要があり、非常に難しいジレンマが生じています。しかし、保険会社の遺伝子情報利用を全面的に禁じることは、保険会社側にとって酷であり、一定の基準を設けたうえでその利用を認めていく必要があるでしょう。 仮に加入者へ告知義務を課す場合、保険会社側の考慮すべき具体的な論点としては、(1) 保険契約締結のための契約書の内容、(2) 告知義務ある者の範囲、(3) 加入にあたって制限を受ける遺伝子情報、の3点が主なものとしてあげられるかと思われます。 《契約書の内容》 契約締結に際して遺伝子検査自体を強制できない以上、契約書及び告知書等において告知義務を明記すべきでしょう。国内でも2000年7月、保険契約締結時には明らかでなかった遺伝病が契約締結後の遺伝子検査で判明したことを理由に保険金の支払を拒否された男性が、保険会社を相手取り保険金の支払を求めた訴訟も起こっています。今後も同様の争いが起きることは必至であり、契約の段階において、発病の予見可能性に関する事項から、契約後の遺伝子検査で陽性と診断された場合の対応等まで、具体的かつ詳細に記しておく必要があるかと思われます。また、被保険者の遺伝子情報の扱い等に関しても、被保険者に対して十分な説明を行っておく必要があるでしょう。 《告知義務ある者の範囲》 この範囲を考えるうえで基準となるのは、保険会社が逆選択によってどの程度のリスクを負うのかということになります。遺伝子検査を受けたことがない者に関しては、逆選択の可能性はないといえるので、(遺伝子検査の受診自体を要求することができるかどうかの問題もありますが)この時点で告知義務を課すことはできないでしょう。よって、告知義務があるのは過去に遺伝子検査を受けたことのある者だけに限定されると考えられます。 《制限を受ける遺伝子情報》 ここでも考えの基準となるのは、保険会社が逆選択によってどの程度のリスクを負うのかという点になると思われます。制限を受けるケースとして、特定の疾患についての遺伝子検査の結果が陽性であることなどがあげられます。英国では生命保険加入時にハンチントン舞踏病の遺伝子検査を利用することを正式に認めるにいたっています。これはハンチントン舞踏病についての遺伝子診断の信頼性が確認されたことから認められたものですが、この他にもアルツハイマー病や遺伝性乳癌など、なお数種類を検査対象とすることを検討しており、日本でも十分参考にすることができます。ただし、遺伝子検査の結果が陽性であり、その特定の遺伝子がある病気に関連するとされていても、その発症可能性が極めて小さいような場合には、制限を受ける遺伝子情報として考慮するのは難しく、現段階では発症可能性の極めて高い単一遺伝子病の情報のみが考慮されると考えるべきです。その他にも、専門的医学的見地から様々な要件をあげることができるとは思いますが、情報の正確性といった面で過渡期にあるあいだは、遺伝子情報によって制限を受けるケースは極めて狭く限定されるべきでしょう。 |
||||||||
![]() | ||||||||
Part.2 バイオ - bio - |
||||||||
| アメリカにおいて1989年秋頃から、栄養補助剤Lトリプトファン剤摂取者の多くに EMS(好酸球増加筋肉痛症候群)と呼ばれる一種の血液疾患が発生。89年までに35名の死亡が確認され、約1200件の発症が報告されました。 トリプトファンは動物が体内で合成することができない必須アミノ酸の一種で、不眠症やうつ病の症状を改善する効果があり、米国では医薬品よりも簡単に購入できる健康食品としてすでに人気があった他、日本でも点滴用輸液や家畜の飼料などとして大いに需要が見込まれていました。しかし、量産技術が確立されていなかったために値段が高く、そのため生産コストを引き下げようとする各企業間において、バイオテクノロジーを応用した開発競争が繰り広げられていました。 昭和電工(本社・東京都)もこれに目をつけ、自社のバイオ技術を駆使、1982年頃から遺伝子組換えを行った微生物を用いてトリプトファンを生産することで、他社をしのぐ低コスト量産化を実現。89年にはアメリカを中心として世界の70%のシェアを獲得するまでに急成長していました。 しかし、89年秋頃からその摂取者に EMS の症状が現れ始めたのをきっかけとし、同年11月には FDA(米食品医薬品局)が販売を差し止める事態にまで発展。その原因究明にあたり、当時70%のシェアを誇っていた昭和電工に焦点が絞られました。調査の結果、昭和電工のトリプトファンには、他社のトリプトファンにはない物質が含まれていることが判明。当初、主に昭和電工の同製品摂取者にかたよって症状があらわれたことからも、史上初のバイオ食品事故かと思われましたが、原因究明が進むにつれ、製造工程において混入した不純物が原因であることが判明しました。この不純物が遺伝子組み替えに起因するものであるかどうかは特定されませんでしたが、その後、同社の製造物責任を問う訴訟が続発することとなります。 90年秋には、アメリカにおける昭和電工の製造物責任に関連した訴訟の係争地域は30州以上にも及び、原告総数も400人に達しています。アメリカでは懲罰的賠償や出来高払いで原告を募る弁護士などがいることもあり、請求された損害賠償総額は11億8000ドル(約1600億円)以上にも上り、その後も請求総額は増加を続けました。これに対し昭和電工は2500人近い被害者との和解を進め、和解金と弁護士費用等で15億6000万ドルを支払うといった大きな損失を被ることになりました。 |
||||||||
![]() | ||||||||
![]() |